新型コロナは一般的に1週間から10日で重症化するといわれる。報告される感染者数と重症者数にはタイムラグがある。

「いまは軽症者が多いですが、指定感染症である以上、彼らを病院に収容してただ観察している状態です。今後、軽症者で病床が埋まり、重症者が増えて入院できず、たらい回しになることが心配です」

 浜松医療センター(静岡県浜松市)の院長補佐で感染症内科部長の矢野邦夫医師(64)も、軽症者の入院の多さに危機感を持つ。同センターは感染症指定医療機関として感染患者を受け入れている。現在は、市内で7月に発生したクラスターの影響もあり、指定病床数6床を上回る患者を受け入れることもある。

「重症者が増えて本当に逼迫する前に、宿泊施設などに移動させておくべきです。季節が変わり、インフルエンザや寒さによる呼吸器系の患者で病床が埋まれば、コロナに備えてベッドを空けておくことはできなくなる。このままでは、冬には医療崩壊が起きると思います」(矢野医師)

 軽症者や無症状者をホテルや自宅療養にしてほしい、という訴えは医師アンケートでも複数見られた。特措法にのっとり、4月2日から各都道府県は宿泊施設を確保している。東京をはじめ首都圏、愛知、大阪などでは数百~数千室を確保するが、他の自治体では、感染者数の推移や病床を押さえているなどの理由で、確保にばらつきがある。

 新型コロナに対応することは、業務の負担増も意味する。医師アンケートでは、「休めない」「長時間労働が多くなった」などの声があがった。

 埼玉協同病院(埼玉県川口市)は、第1波のときは発熱外来と同時に、軽症者を中心として入院患者も6月上旬まで受け入れた。現在、入院業務は休止中だ。

 発熱外来では、4月と5月は週に数人の陽性者が出た。診察室のほか、屋外の陰圧テントで医師数人と看護師で回した。増田剛院長(59)は振り返る。

「保健所の紹介で、朝から夕方まで、感染疑いのある患者が断続的に来ました。中には『陰性証明を書いてくれ』『もしコロナだったら責任を取ってくれるのか』とすごむ人もいて、現場の大きなストレスでした」

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