一方、広島工業大学の森脇武夫教授(地盤工学)は、一歩踏み出して考える必要があると話す。

「土砂災害が発生しやすい危険な場所に住んでいる人が多すぎる。だから、防災対策をしても間に合わない。危険な場所に都市を拡大しない方法を考える必要があります」

 近年、国は都市機能を集約するコンパクトシティー政策を進めているが、多くの自治体は都市部の中で住宅の立地を促す「居住誘導区域」を設けている。しかし国交省が昨年12月、計画を進める275都市を対象に行った調査では、34%に当たる93都市で「居住誘導区域」と「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)とが重なることがわかった。森脇教授は言う。

「長いスパンで考えると、災害の起こらない場所に住む土地利用を考えていかないといけない。防災も含め、土地利用の仕方を考え直すことが大切です」

 梅雨が明けても、ゲリラ豪雨や台風が多発しやすい時期になる。これまでの大雨で地盤が緩んでいるところも多い。土砂災害への備えの意識を、新たにしたい。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年8月10日-17日合併号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら