関さんがこれまで15回訪れたのが、本県多良木町の拠点。寝台特急を利用した簡易宿泊施設「ブルートレインたらぎ」が気に入って、小6の次女も一緒に訪れることが多いという。ここの家守を務めるのは、多良木町役場の職員・栃原誠さんだ。

「そこでしか出会えない人との出会いが、多拠点生活の魅力」と語る関さんだが、親子ともにその醍醐味を味わえるのは家守のおかげでもある。

 あるとき次女を連れて滞在した関さんに「せっかくならデュアルスクール制度を使ってみては?」と栃原さんが提案した。デュアルスクール制度とは地元で籍を置いている学校以外にも通学ができる制度。同町の場合、体験入学制度があり、双方の学校の合意があれば教育委員会への簡単な申請だけで小学校に通える。栃原さんの働きかけで、次女は滞在中に多良木の小学校に数日間通い、新しい友達もできたという。

 子どもがいたら地方への中・長期滞在はできない、そう思い込んでいる人にとっては、一つのモデルケースになるだろう。

 最後に紹介するのは、さくらインターネットで新規事業開発に従事している城戸彩乃さんだ。同社ではコロナの影響で3月から「原則リモート」になることが言い渡された。さらに、コロナが収束してもその方針は戻すことはない、とも。

 城戸さんの場合、元々旅や移住への関心は高かったものの、仕事が好きで、生活は仕事第一。旅や移住は半ば諦めていたという。だがリモートになったことで「仕事も全力でやりながら移住生活できるじゃないか」と思い立った。

 東京のマンションを引き払い、まずは長野・駒ケ根のマンスリーマンションに移り住んだ。

 かねがね「日本全国を回りたい」と思っていた目標を叶えるため、この先2年ほどは2カ月単位で全国を転々とする予定という城戸さんが、次の行き先探しのために利用しているのが移住のマッチングサービスSMOUT(スマウト)だ。スマウトの特徴は、登録したユーザーに自治体などから声がかかる「スカウト」の仕組み。このユニークな仕組みについて、事業責任者の中島みきさんはこう説明する。

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