築地本願寺「オンライン法事」。開始前のテストなど、パソコンの動作確認を担当する僧侶(右)と、本尊に向かいお経をあげる僧侶(撮影/写真部・小黒冴夏)
築地本願寺「オンライン法事」。開始前のテストなど、パソコンの動作確認を担当する僧侶(右)と、本尊に向かいお経をあげる僧侶(撮影/写真部・小黒冴夏)
法話のときはパソコン画面の向こうにいる家族に語りかける(撮影/写真部・小黒冴夏)
法話のときはパソコン画面の向こうにいる家族に語りかける(撮影/写真部・小黒冴夏)

 数年前から法事などにオンラインを活用する寺院が増えてきた。その動きは加速し、墓参りや葬儀にも広がる。簡素化が進むことへの抵抗感を持つ寺院もあるが、選択肢の一つとして定着しそうだ。AERA 2020年8月10日-17日合併号に掲載された記事を紹介する。

【写真】法話のときはパソコン画面の向こうにいる家族に語りかける

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「音声と映像は届いておりますでしょうか?」

 ノートパソコンの画面を通じた僧侶の呼びかけに、家族が答える。「大丈夫です」

 こんなやりとりで始まったのは、東京・築地本願寺の「オンライン法事」。新型コロナの感染拡大を受け、同寺では法要の様子をウェブ会議ツール「Zoom」を通して届ける試みを始めたのだ。

 7月22日。この日は東京都内の家族が「参列」した。昨年11月に94歳で亡くなった男性の初盆の法要だ。まず、担当の僧侶が家族に式の流れを説明。続いて本尊に向かい読経をし、その後、画面に向き直り、法話を行う。25分ほどの仏事だ。

 なぜ、家族はオンライン法事を選んだのか。男性の娘(63)は、きっかけは母親(86)が肩を骨折し、外出がままならなくなったことだと話す。

「慌ただしい毎日で初盆のことも忘れていたのですが、築地本願寺からの案内葉書でオンライン法事のことを知り、母が『ちょうどいいわね、やりたい』と」

 一人暮らしの母親の自宅にはインターネット環境が整っていなかったが、娘の夫や孫の協力で態勢を整えた。当日は母親の自宅リビングに集まり、大画面テレビにつないで4人で参加したという。

「やって良かった。母の骨折が治ったとしても年が年ですし、これからもオンライン法事はありかなと思います」

 印象に残ったのは、法話の後、僧侶が語りかけてくれたことだという。「何かお聞きになりたいことはありますか?」という問いに、母親が「こういった形で供養ができ、仏もきっとびっくりしていると思う」と笑って答えると、僧侶は「またコロナが落ち着いたら、お参りしていただいて」と応じていた。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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