Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中
Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中

 大人気韓国ドラマ「愛の不時着」で、ヒョンビン演じる主人公のリ・ジョンヒョク。実は過去作には、愛する人を全力で守るジョンヒョクに至るまでの数々の布石が落ちていた。AERA 2020年8月10日-17日合併号で、ヒョンビン出演ドラマを168時間見たコラムニスト・矢部万紀子氏が語る。

【写真特集】「愛の不時着」の名シーンからヒョンビンの様々な表情をお届け!(6枚)

*  *  *

ヒョンビン沼の法則。すべての道は「愛の不時着」に通ず。

 なぜこうも「愛の不時着」にひかれたのだろうと考える。答え、リ・ジョンヒョクがあまりにもかっこよかったから。どこがかっこよかったのだろう。答え、一途にユン・セリ(ソン・イェジン)を守るから。ここまでは自明だが、一つ大前提があると気づいた。ジョンヒョクはセリを、そのまま愛している。

 沼の皆さまなので、少しネタバレをお許しいただくなら、「植物にかける、きれいな10の言葉」が象徴だと思う。3話でセリの買ったトマトの苗にジョンヒョクが話しかける。「海、日差し……そよ風、初雪」。ややあって、「ピアノ」。最終話でセリは、ジョンヒョクから送られた鉢植えにこう言う。「美人経営者、ストップ高……業界1位、限定版」。最後が「リ・ジョンヒョク」。

 これこそ、セリが変わっていないことの証左。ジョンヒョクと出会い、あんなにもいろいろあっても変わらないセリ。ジョンヒョクが、彼女の生き方を全肯定しているからだと思う。何かせよとか、このように変われとか、一切求めない。だからセリも自分を偽らず、ありのままでいられる。そういう2人が愛し合う心地よさが、「愛の不時着」には満ちている。

 過去作品と重ねてみると、ヒョンビンがジョンヒョクになっていく道が見える。得意のラブコメディーで特に顕著だ。

「私の名前はキム・サムスン」「シークレット・ガーデン」「ジキルとハイドに恋した私」と3作あって、すべて御曹司役。恋の相手は、それぞれパティシエ、スタントウーマン、サーカスの団長。叩き上げ系とでも言うべき職を持つ。

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら
次のページ