ざっと過去5年の推移を見ると、理系では医・薬の志願者減が顕著だ。他方、医療技術や情報・メディア、生命は堅調で、理・工もじわじわ伸びている。文系では国際が堅調で特に19年度は大きく伸びたが、反動で20年度は減少。観光は一時のブームが去り、経済・経営・法も下降気味。20年度は理系人気が高く文系人気が低い「理高文低」の傾向が明確になった。

 ではコロナ禍という変数で21年度の入試はどう動くのか。大学通信常務取締役の安田賢治さんは「さらなる理高文低になるのは確実」と見る。3人の専門家の予想も安田さんの見方と一致する。背景にあるのはコロナ不況の懸念だ。過去の景気後退期には理系志向に加え、地元志向も強まった。

「駿台の模試は成績上位層が対象なので、社会情勢にはあまり影響されないが、それでも直近の模試では仙台や広島などで地元志向が強まっている」(駿台教育研究所進学情報事業部部長の石原賢一さん)

 安田さんも「理系は基本的に国公立志向が強い。特に地方では地元の国公立大を目指す生徒が増える」と予想する。

 学部系統別で特に大きな伸びが予想されるのは理・工と情報・メディアだ。理工系で注目すべき大学・学部として筆頭に挙がったのが、冒頭の岡山大だ。今回の改組で、理工系2学部8学科を四つの「系」に集約。特に注目は「情報・電気・数理データサイエンス系」で、AIやビッグデータ、あらゆるモノがネットにつながるIoTを総合的に学べるようにしたという。

 もう一つの目玉は「環境・社会基盤系」。大学としてSDGsを推進するため建築教育プログラムを設け、東大特別教授で建築家の隈研吾氏を特別招聘(しょうへい)教授に迎える。

 新生工学部では学び方も柔軟にする。入学時には「系」という大きな括りで幅広い分野を学び、2年次から自分の関心に沿って10のコースから専門を選択できる。同様の仕組みは群馬大の理工学部、九州大の工学部でも導入予定。旺文社の「蛍雪時代」編集部大学入試分析チーフの小林弘明さんによると、受験時ではなく後からじっくり進路を選ぶ「レイト・スペシャリゼーション」を導入する大学が増えているという。

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