12年に芸能界デビューし、映画やドラマを中心に経験を積む。役者としての転機は、同世代の多くの俳優たちと共演した映画「十二人の死にたい子どもたち」だった。

黒島:撮影が始まる前、プロデューサーの方が「役者たちの演技対決になるからね」とおっしゃっていたんです。12人の役者が絶えず現場でせりふを口にしている。そのなかで自分はどうするべきかと考えたときに、「まずは相手の言葉を聞くこと」を意識しなければ、と思いました。自分がせりふを言うことだけに集中するのではなく、相手の言葉を聞き、反応していく。そうすることで自分の感情も整理されていく。相手のせりふを聞くことの大切さを改めて知ることができた現場でした。

 俯瞰して、冷静に自分を分析する。「なぜこう感じるのだろう」と一から自分の気持ちを調べる習慣もあるのだという。

黒島:幼い頃から、父に「他人と過去は変えられない」と言われて育ったこともあり、「こうしてほしい」と相手に期待するよりも、自分を変えていこうとする習慣が自然と身についていたのかもしれません。自分が付き合い方を変えることで、きっとうまくいくようになる、と。

 自分の気持ちに対しても、疑問に思ったら本などを読んで調べます。言葉そのものの意味をたどっていくことで「なるほど、だからそう思ったのか」と気づくことも。いろいろ調べた結果、一周回って「いまが楽しければオッケー!」なんて思うこともあります(笑)。

 今年4月、5月の外出自粛期間中は、自分のことについて深く考える時間になった。

黒島:以前は自分に自信がなくて、取材でも「自信がないんです」とよく口にしていたんです。お芝居に対しても、いつも自信がなかった。でも、そうした感情について考えを巡らせるなかで、「自分を否定するのはよくない」と思うようになりました。

 自分のことが嫌いなわけではないけれど、自分を否定して仕事をするということは、私のことを信じて仕事をしてくださる周囲の方々のことも否定していることになるのではないか。一緒に仕事をしている皆さんはプロですし、たくさんの素晴らしい作品を生み出している。そんななか、自分が自分に自信を持てなくてどうするんだ、と。

 いまはまだ、「自信たっぷり」までは思えないのですが、少しずつ自分を認めていきたい。自分を認めていけるようになれば、それは相手にも伝わり、もっと気持ちよく仕事ができるようになるかもしれない。お芝居の現場が一番好きですが、そんなふうに考えるようになったことで、バラエティーや写真の撮影といったお芝居以外のことも楽しめるようになりました。

 仕事が再開してすごく楽しいですし、現場に行ける喜びをいままで以上に感じています。うまくいくかわからないけれど、2カ月のあいだに考えたことを少しずつでも実践していけたら。いまはそう思っています。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2020年8月3日号