「痛勤」を避けられるのもテレワークの利点。本格的な普及のためにはコロナ禍の中では目立ったマイナス面をクリアする必要がある (c)朝日新聞社
「痛勤」を避けられるのもテレワークの利点。本格的な普及のためにはコロナ禍の中では目立ったマイナス面をクリアする必要がある (c)朝日新聞社

 緊急事態宣言の解除後、テレワークが減少したことで在宅勤務と出社する社員が混在。一斉でのテレワークよりも、評価やキャリア面での不安が高まっている。AERA 2020年8月3日号で掲載された記事を紹介。

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 テレワークで通勤時間や勤務中の移動にかかる時間がゼロになれば、生産性の面からもメリットは大きい。一方で、緊急事態宣言解除後にテレワークが減った理由には「生産性」以外の要素もある、と野村総合研究所(NRI)未来創発センター主席コンサルタントの中島済さん(56)さんは言う。

「人は原則として変化を好みません。よほどテレワークのメリット、オフィスワークのデメリットを感じない限り、変わらないのが基本でしょう。そもそも経営者の多くはオフィスワークの成功者。そのスタイルを否定する人は少ないはずです」

 問題は他にもある。全社員が原則在宅勤務という状況であれば、それを前提とする形で組織の仕事が組み立てられるが、相当数が出社することになると出社しているメンバー中心に仕事が回るようになる。在宅であることの不便や不自由が増し、結果として出社比率がさらに高まることにつながる。

 パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児さん(37)は、緊急事態宣言解除後はテレワークに関する基準やポリシーを明確に示さない会社も多く、「皆が出社しているから、自分も出社する」という同調圧力が高まりやすく、なし崩し的に不要な出社が増えていった、と指摘。そんな中、感染者数が再び急増し、企業は感染リスクと出社方針について改めて難しい判断を迫られているのが現状だという。さらに日本企業は今後、テレワーカーとオフィス勤務する人が混在する「まだらテレワーク」におけるマネジメント課題に直面し続ける、と予測する。

「『一斉テレワーク』が多かった緊急事態宣言時より、評価面やキャリアに対する不安感が特に若年層で強くなっています。テレワークの長期化に伴い、また育児と仕事の両立は女性を中心に負担感が増しており、十分なケアも必要です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年8月3日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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