●奈良時代~安土・桃山時代

 仏教が伝来し、中国との交流が盛んになるなかで、天然痘がもたらされて大流行した。奈良・東大寺の大仏は、流行を抑えるおはらいのために朝廷が造立したものだった。薬もワクチンもない時代の感染症対策は、神仏に祈ることだった。

 平安時代に書かれた『源氏物語』には、主人公の光源氏がマラリアにかかった記述がある。また、愛する紫の上が胸の病気にかかり、光源氏が苦しむ様子もある。

 イタリア生まれのコロンブスなどヨーロッパの人々がアメリカ大陸などに渡る大航海時代が訪れると、さまざまな物資が交換され、世界中へ広がった(コロンブスの交換)。感染症もその一つで、日本にも梅毒などが入っている。

●江戸時代

 江戸時代には海外渡航が禁止され、貿易は制限されて海外との交流は減った。しかし、すでに感染症は日本に定着し、たびたび人々を脅かした。はしか(麻疹)は、十数年ごとに何度も流行を繰り返した。一度はしかにかかった人は免疫ができるため、かからない。しかし、一度は収まっても、はしかにかかっていない人が増えだすと、再び流行が繰り返されたのだ。

※月刊ジュニアエラ 2020年8月号より

【2020年7月30日】見出しから「紫の上は結核に」という記述を抜きました。読者からの指摘を受け調べたところ、紫の上の病気が結核かどうかは不確かで、「感染症で隔離されて人に会うことができなかった」というのは誤りでした。

ジュニアエラ 2020年 08 月号 [雑誌]

ジュニアエラ 2020年 08 月号 [雑誌]
著者 開く閉じる
AERA編集部
AERA編集部

1 2