「今の家電は、ライフスタイルに合わせた細かな選択肢が豊富です。冷蔵庫や洗濯機などの一般的な家電でも、自分に合ったものを選べば家事の細かな手間が劇的に短縮されるんです」

 お弁当のフタが結露するのを防ぐ急速冷却ゾーンが付いた冷蔵庫、アイロンをかけたような仕上がりになる洗濯乾燥機など、汎用性はなくとも「誰かにとってのかゆいところに手が届く」家電が増えている。全部取り入れるのは無理だが、誰かが薦めるものや話題のものではなく、自分に合ったものを取り入れるのが大切だという。

 さらに、「時短」以上の効果もある。石井さんが続ける。

「最新のロボット掃除機は床をマッピングしてムラのない掃除をしてくれますし、調理家電を使えば料理の腕がグッとアップする。洗濯洗剤は多すぎても少なすぎてもダメですが、自動計量ならその心配もありません。最新家電を使えば時短になるだけでなく、自分でやるより質が上がるケースも多いんです」

 家事負担軽減にはアウトソーシングもひとつの手だ。家事代行サービスは、格安プランなら1時間2千円程度から利用できる。都内のシングルマザーの女性(38)は1年ほど前から週1回、家事代行サービスを利用している。1回3時間、キッチンや風呂、トイレなどの水回りとリビングの掃除をお願いする。3時間程度の掃除ならば週末に自分でこなすこともできるが、ひとりで家事をしていると言いようのない孤独感があるという。

お金でお願いしているサービスであっても、自分に代わって負担してくれる人がいると思えるだけで気分が楽になるんです」

 足元の家事をこなしてくれる以上に、他人との共有が負担「感」の軽減に役立っている。

 すべての家事を自分たちで、完璧にやることが美徳だった時代はすでに終わった。家電に頼り、人に頼って家事を手放せば、違う世界が広がるはずだ。(編集部・川口穣)

AERA 2020年7月27日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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