では、必要な家事、やらなくていい家事はどう見極めればいいのだろうか。『その家事、いらない。』の著書がある家事・育児コンシェルジュの山田綾子さんはこうアドバイスする。

「やめる家事を探すのではなく、これだけは大事にしようと思うものを考えて合格ラインを定めましょう。他はやらなくてもOKと考えれば、ストレスなく家事を減らせます」

 山田さんの場合、食事は「栄養あるものを家族一緒に食べる」ことを合格ラインに設定しているという。それができれば、同じ献立が続いたり、丼ものなど簡単な料理になっても問題ない。下ごしらえを省略した料理やちぎっただけのレタスも「1品」として堂々と食卓に並べる。

「以前は1週間のメニューを考えて、一汁三菜しっかりつくろうと頑張っていました。それで夕食の時間が遅くなって、子どもを早く寝かせなければと叱りつけることも多くなった。すべてが逆効果でした」(山田さん)

 ならば「手抜き料理」になったとしても、楽しく食事する機会を大切にしようと決めた。

「仕事のように“これも、あれも”ではキリがないしストレスもたまります。何を大事にするかは人それぞれですが、“大事にしたいこと”を目指す家事は自然と楽しくなります」(同)

 自分がストレスに感じることを見つけ、その工程を「やめる」ことも大切だという。

 油で汚れた台拭きの洗濯がストレスなら、使い捨ての業務用に替える。白いスポンジは汚れものを洗うのを躊躇するし漂白も面倒だから、黒いスポンジを使う。食器は角を洗うのが手間だから、すべて丸形にする。

 洗濯物を畳むのが手間ならば、トップスはハンガーにかけてそのまま収納、靴下やボトムスなどはポイッと入れられるバスケットを用意すればいい。

 小さなストレスをひとつひとつ削っていけば、「家事の総量削減」にも、「ストレス軽減」にも、大きく役立つという。

「テレビやインスタにあふれるキラキラ家事はごく一部。手を抜いて、ストレスをためない家事をしましょう」(同)

(編集部・川口穣)

AERA 2020年7月27日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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