東京女子医大を退職した看護師の女性。「人間関係がよかっただけに残念」と語った(撮影/井上有紀子)
東京女子医大を退職した看護師の女性。「人間関係がよかっただけに残念」と語った(撮影/井上有紀子)
7月15日、ストライキをした経緯を話す船橋二和病院労働組合の柳澤裕子書記長(右)と組合員の関口麻理子さん。「もう我慢できなかった」と話した(撮影/井上有紀子)
7月15日、ストライキをした経緯を話す船橋二和病院労働組合の柳澤裕子書記長(右)と組合員の関口麻理子さん。「もう我慢できなかった」と話した(撮影/井上有紀子)

 新型コロナウイルス患者を受け入れる病院の経営が悪化している。最前線で働く医療従事者たちが、モチベーションを失い始めている。AERA 2020年7月27日号から。

【写真】職員がストライキをした病院も

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「新型コロナウイルスの流行にかこつけて、ボーナスを出さないのでは」

 6月12日、東京女子医科大学病院で働いていた30代の女性看護師は、労働組合だよりを読んで、怒りに震えた。大学は、新型コロナウイルスの影響で4、5月の収支が30億円近いマイナスとなったとして、医師や看護師、医療技師、事務など全職種に対してボーナスを「支給する要素は全くない」と回答していた。

 関係者によると、新宿の本院と二つの系列病院は、都の要請を受けて新型コロナの入院患者を受け入れてきた。

「一般病棟でも、慣れない防護具をつけて業務にあたりました。体調が悪い患者さんが来たら、『コロナかもしれない』とピリピリしています。発熱以外の通常の患者さんは減りました。一時帰休もあり、『ボーナスも少しは下がるだろう』と、みんな覚悟はしていました」(女性)

 だが、現実は予想より厳しいゼロ回答だ。

「大変でも『ボーナスがある』と思って頑張った。大学は現場に頑張れと言っておきながら、結局は人件費を削るのです。コロナをきっかけに給与も下げて、看護師を使い捨てようとしているのではないか。もう上層部を信用できない」(同)

 結局、大学への不信が募り「仕事へのモチベーションがなくなった」。女性は辞表を提出した。周囲の看護師や薬剤師も何人か退職を決めたという。

 同大では、看護師の退職希望者が400人を超えると報じられている。所属看護師の約5分の1にあたる数だ。だが、6月29日の組合だよりにはこう書かれている。「(大学側から)全く危機感は感じられません」

 組合は「女子医大に働く看護師をはじめとする教職員は、単に『夏季一時金ゼロ』が理由で退職を希望しているのではなく、大学理事会の『教職員を大事にしない姿勢』に失望し、働き続けていく展望を見いだせなくなった」とコメントを公表した。

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