一方でこの議員は、党内の事情は全く別だと話す。

「解散総選挙が現実味を帯びてきた今、国民には、同じ選挙区で、仮に立憲や共産と競合したとして、最終的に勝ち抜ける実力と知名度を持つ議員が少ない。それに、党の支持率も1%にも至らず、これでは比例票の行方も危うい。前回の総選挙では、小池旋風に乗って当選した議員も、今度は議席を失う可能性があるのです」

 有権者の間には、民主党時代から分裂騒動を繰り返す両党に対し「野合ではないか」と突き放す見方もある。また両党には、昨年の参議院議員選挙で同じ選挙区に候補者を立てて争い、両党の支持者の間で修復しがたい軋轢を生んだ地域もある。

 しかし、合流を主導する立憲民主党の幹部は、それでも合流し新党を立ち上げる意味が大きいと断言する。背景にあるのは、永田町に吹く解散風だ。総選挙は、「自公政権か否か」の政権選択の選挙となる。

「個別の選挙区で共産を含めた野党で候補者を調整することはできますが、そのスケールでは政権交代とはなりません。公示の段階で与野党ががぶりと四つに組み合って、自公の候補者と一対一の構図に持ち込むことができれば十分に勝算はあります」

 政治の世界には「政権は野党が奪うものではなく、与党が失うもの」というセオリーがある。現在、安倍政権に逆風が吹いているのは確かだが、だからと言って「政権交代」の大義だけでは有権者の支持は得られない。消費税、原発、新型コロナ対策など、有権者が注視しているのはあくまで政策だ。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年7月27日号