4、オチない系


 そもそも服に文字を入れる必要があるのか? イラストや柄があれば十分ですし、なんなら無地でも服の機能性に差は生じません。それでもあえて文字を入れているのだから、そこには何かしらのメッセージ性があったほうがいいわけです。アメリカの子ども服には、Always hungry(いつも腹ペコ)とか、As beautiful as Mommy(ママと同じくらい素敵)など、ウィットの効いたフレーズがプリントされています(言い手が子どもであることは明白なので、文頭の「I am」は省略されています)。
 ところが日本の子ども服には、「Let’s go outside(お外へ行こう)」のような、毒にも薬にもならないフレーズが多用されます。もっとひどいのは文章が途中で切れている場合。「A bridge between」という語句の後に別の文章が重ねられていて、なんなの、一体どこに架かる橋なの? と気になって仕方がありません。

 ――と、ぐちぐち書き連ねましたが、正直、ここまではいいんです。1の正しくない系などは、うっかりアメリカで子どもに着せてしまった日には恥ずかしすぎて穴があったら入りたい、穴を掘り進めて地球の向こう側ニッポンまで赴きメーカーに服を返品したいとは思いますが、原因は単なる文法ミスだとはっきりわかります。2~4も日本語の雰囲気をまとった独特の英文で、趣すら感じます。英語はことば。使う人や場所、時代によって変化するのは当然ですし、欧米で使われている英語だけが正解ではないですから。問題は、ここからの2つです。

5、教養ない系
 たとえば「Aboriginal California」。Aboriginalは先住民という意味ですが、基本的にはオーストラリア周辺の先住民(アボリジニ)の人たちのことを指します。アメリカのカリフォルニアには結び付けられません。さらに、Aboriginalという単語は差別的なニュアンスが含まれているため使わないほうがいい、というのが昨今の論調です。ことばは生き物ですから時代によってニュアンスが変わることも大いにあるわけで、特に民俗文化やジェンダーに関する表現には注意しなければいけません。

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お酒やドラッグ、性的表現も