その再会を祝すかのように楽器が、歌声が跳ね、踊り、重なり合う。私たち観客は画面を通し、その場に居合わせたに等しい距離感で、彼らのくつろいだ演奏を見る。本番ではなく、まるでリハーサルの風景を覗いているみたいな気分だ(特筆しておきたいのは、そういった感覚を醸成するのに大きな役割を果たしたのが、彼らの表情や手もとに肉迫するカメラワークだったことだ)。
10年前のちょうどこの日、2010年7月12日に星野源は同じ渋谷クラブクアトロにて初のワンマンライブをおこなった。その際に歌った曲のなかで、今回もまた披露した曲は1曲、2010年のファーストアルバム「ばかのうた」に収録した「老夫婦」である。彼はこの曲を弾き語る前に、カメラの向こうにいる視聴者に対して語りかけた。
「何度も歌っている昔の曲を歌うと、タイムスリップしたような不思議な気持ちになります。こんなに長い時間、音楽をやってたんだな」と。
そして2011年3月に書いた曲、「未来」を歌う直前には、「いろんなことがあって、どんどん時間は過ぎてゆくけれど、その分未来が生まれていく」と話してからこう続けた。
「その頃には自分がこういう場所に立つとは想像できていなかったので、すごく面白いなと思うと同時に、生きてゆくのは大変だなと。でもそのなかで面白い瞬間とか、楽しい瞬間とか、ちゃんと自分で作ってガシガシ生きていきたい」
この日の配信チケットの販売数は約10万枚。おそらくはその数倍の人たちが、10年の月日を経て、10年前と同じ会場に立つ彼の現在を、その過去や未来を透かしながら見た。
(文/ライター・門間雄介)
「Gen Hoshino’s 10th Anniversary Concert “Gratitude”」は、7月19日日曜日19:30までに視聴パス(税込み3500円)を購入すれば、同日23:59まで視聴可能
ご購入と詳細はこちら。https://l-tike.com/hoshinogen
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