また、モチベーション維持には、細かなハック方法も必要だ。私が実践していたのはLINEの「ダイエット報告部」とGoogleカレンダーの「タスク化」。まず、LINEでは、ダイエットをしたい友人らとグループを作成、食事や運動の内容のみを報告し、「えらい」「すごい」とだけ返信するシンプルなルールで運用する。これにより、他人にほめてもらえるというインセンティブ(報酬)を自分に与えることができるのだ。肥満治療には実際の人間関係によるサポートが影響することが知られるが、SNSでもそれを代替できる。そして、Googleカレンダーには、「取材」や「会議」と同等のタスクとして、「食事」「運動」を記入、他の予定をブロックする。これにより、前もって決めた時間に食事・運動をすることが徹底できる。その前後の時間をより効率的に使おうとするため、仕事自体も速くなるという効果があった。

ステイホーム期間で太った人も多いだろうが、それはダイエットの原理原則「消費エネルギー>摂取エネルギー」に照らせば当たり前のことだ。家にいると消費エネルギーは下がり、ストレス解消でおいしいものを食べれば摂取エネルギーは上がる。その差が脂肪になって体に残る。

 私はそこでまず、緊急事態宣言発令時に摂取エネルギーの上限と、消費エネルギーの目標を定めた。アクティビティートラッカーによれば、私の基礎代謝は1800kcal前後。家の近所で30分のジョギングを毎日の日課とし、そこで1回400kcalほど消費する。食事量が2200kcal以内であれば太ることはない。上半身の筋肉が落ちるかもしれないので、2~3日に一度は筋トレをする。

 緊急事態宣言で飛び込みの予定などは入りにくく、Googleカレンダーでの管理もしやすい。LINEでの連絡はむしろ頻繁だ。ある意味ではやせるべくしてやせたとも言える。

 意志だけではどうにもならない。しかし、ダイエットの原理原則を理解し、正しい知識を身につければ、環境を変化させて「自然とやせていく」生活スタイルになる。コロナ禍のように、環境自体が変化しても、柔軟に対応できるのだ。(朝日新聞社・朽木誠一郎)

AERA 2020年7月20日号より抜粋