女性監督が考える“老い”とは 一通の手紙から始まる交流とやさしく美しい終着点 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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女性監督が考える“老い”とは 一通の手紙から始まる交流とやさしく美しい終着点

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中村千晶AERA
Ana Luiza Azevedo/1959年、ブラジル・ポルトアレグレ生まれ。84年から映画界で働き、初の長編映画「世界が終わりを告げる前に」(2010年。ブラジル映画祭2012などで上映)で国内外数々の賞を受賞。小津安二郎監督のファンで、本作は「晩春」のイメージもあるそうだ (c)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

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「ぶあいそうな手紙」/エルネストは、若いビアにうながされ、初恋の人に手紙の返事を書くことに──? 7月18日から順次公開 (c)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

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「幸せなひとりぼっち」/発売元:アンプラグド、販売元:ポニーキャニオン、価格3800円+税/DVD発売中 (c)Tre Vanner Produktion AB. All rights reserved.

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 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

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 気難しそうな老人とパンキッシュな風貌の若い女性。どこにも接点がなさそうな二人がブラジル南部の街・ポルトアレグレで出会い、互いに何かを得る。ユーモア溢れる物語をつむいだのは、その街に生まれたアナ・ルイーザ・アゼヴェード監督(60)だ。

「私は“老い”について語りたかったのです。老いをどう生きるか、はブラジルを含め世界中で大きなテーマ。でも、『これ』という正解がない」

 78歳の独居老人エルネストは、ほとんど目が見えない。そんな彼に故郷ウルグアイから一通の手紙が届く。家政婦はスペイン語の手紙を読むことができず、彼は偶然出会った23歳のビアがスペイン語を読めると知り、代読を頼む。

「ビアはまさにエルネストにとっての目になります。『あとは死ぬだけ』と思って生きていた彼に刺激を与え、最終的には彼の背中を押すのです」

 老人と若者の交流は古今東西、さまざまな物語に描かれてきた。最近ではお笑い芸人・カラテカ矢部太郎さんのエッセーマンガ『大家さんと僕』のヒットもある。

 だが、時に危うさをはらむこともある。本作ではビアは最初、エルネストの家で小さな盗みを働き、観客をハラハラさせる。エルネストの家政婦や銀行の行員もビアを疑う。

「実はブラジルでも老人を相手にした“振り込め詐欺”がひんぱんに起こっています。銀行の外で年金を引き出した老人を襲う強盗も多い。子ども世代はどうしても親を危険から守りたいと思ってしまう」

 しかし、老いによる弱さばかりに目を向けることが高齢者の幸せになるだろうか? と監督は問い掛ける。

「エルネストが手紙の代読を仕事として与えることで、ビアは盗みを働かなくなる。ビアはエルネストの殻を破り、一歩を踏み出す勇気を与える。二人はお互いに変化を与え合うのです。確実にいえるのは高齢者には若い人との共存や交流がとても大切だということ。94歳と88歳の私の両親が孫やひ孫との交流でバイタリティーを得ていることも、創作のヒントになっています」

 最近のブラジルでは、コロナ禍で高齢者の買い物代行を若者たちが自発的に引き受けるという連帯もあったという。


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