■企業の支援で離職率減

 登録者はサービス開始から3週間で3千人を超えた。

 この春から東北大学に入学し一人暮らしを始めた男子学生(20)も早速このサービスを利用し六つの奨学金に応募中だ。

 母子家庭のため授業料の免除は受けられているが、寮費や食費、生活費などを合わせ毎月6万円程度を自分でまかなう必要がある。飲食店のバイトも探したがコロナ禍で難しい。

「生活があっての学業。課題などが多いときにお金の不安が加わると、二重でメンタルがやられがちです」

 学内推薦の手続きがあったり複数の審査があったりで、まだ給付は確定していないという。

 給付型奨学金が残念ながら得られなくても、まだ希望はある。高さんによれば、最近増えているのが、就職の際に社員の奨学金を企業や自治体が代わりに返済するケースだ。制度や企業によるがおよそ50万~100万円が肩代わりされることが多いという。

 同社は、奨学金の返済負担が軽減される求人のみを扱う求人サイト「Crono Job」も昨年立ち上げた。

 企業にとっては、採用にプラスに働くうえに、入社後の人材流出を防ぐリテンションの役割もあるようだ。それもあって海外で流行(はや)り始め、日本でも増えてきているという。ある企業では1年で3割だった離職率が1割程度に減ったそうで、会社が自分を支援してくれているという思いが社員のエンゲージメントを高めるのかもしれない。

 高さんはこれらの奨学金サービスを通じて、情報の格差、経済格差を埋めるだけでなく、生まれた環境で目標が狭まってしまう現状を変えたい、と話す。

「親と地元の先生の話だけを参考に将来を決める人が多いのが現状です。奨学金を得てチャレンジしている人たちやそのプロセスを紹介することで、こういう人生を歩んでみたい、というサンプルを見つけるきっかけにしてほしい」

(編集部・高橋有紀)

AERA 2020年7月20日号