──コロナ禍で不自由な状況のなか、これからの文化はどうなっていくと思いますか?

 言葉の重要性はより強くなっていくと思います。マスクをすることが当たり前になり、人と人との物理的な距離が大きくなると、表情などの非言語的なコミュニケーションが伝わりにくくなりますよね。言葉を使って細かく説明しないと意図が伝わらない場面が増える。クリープハイプは言葉を伝えることに重きを置いているバンドなので、そういった意味では強みを発揮できるはずだし、その分、責任も増すと思っています。より的確な言葉を発信できるように、自分の言語感覚を磨いていかなければいけないですね。

──あらゆる場面でオンラインでのやり取りが増えました。

 オンラインのコミュニケーションは効率的で、これまでどれだけの無駄があったかが浮き彫りになりました。でも、オンラインで済むようなことほど直接会って話したくなります。オンラインのコミュニケーションは平面的だと感じていて、相手と異なる意見を言ったり相手の言葉に異議を申し立てたりすると、ただの怒っている人だと思われてしまう。だから、悪く思われないよう過剰に気を使ってしまうんです。そうするとやり取りのクオリティーは落ちてしまいますよね。喜怒哀楽でいうと、怒と哀が伝わってこない。だから、ちゃんとやり取りをした感じがしないんです。

 でも、会って話す時は、もう少し立体的に感情を伝えられる。オンラインとオフラインの違いは、平面か立体かだと思います。

──そういう意味では、最近出版された対談集『身のある話と、歯に詰まるワタシ』は、非常に密な対談であり、立体的ですね。

 とても貴重な機会で、対談中は常に緊張感がありました。今は人と直接会うことに緊張感が付きまとうので、そういう意味では今っぽいかもしれません。

──コミュニケーションへの考えは、コロナを経て変わりましたか?

 いや。変わっていないからこそ、オンラインでは満足できないのだと思います。

(ライター・山田宗太朗)

AERA 2020年7月20日号