──伊澤さんは、なぜ養育費やひとり親の現状に興味を持ったのですか。

伊澤:離婚訴訟を通じて養育費の未払いの現状を見聞するうちに、「弁護士業界の限界」を意識し始めました。弁護士は時間単価が高く、離婚や養育費の相談をしたくても、相談料が払えない人がたくさんいる。この矛盾を解決するために、弁護士のプラットフォームを作って費用を安くできないかと。前澤とはそういったビジョンやビジネスモデルについて、すり合わせていきました。

前澤:我々は大きく二つの課題を解決しようとしています。まず、離婚したとき、子どものいる夫婦は単なる口約束ではなく、公正証書で養育費の取り決めをするべきなんです。ところがそれをやっている夫婦は全体の2割しかない。公正証書を持たないひとり親の方に対して「我々が無償でお作りします」というわけです。二つ目。公正証書は持っているけど未払いが続いている場合、これまでは自分で法律事務所に相談し、多額の手付金を払って弁護士と交渉しなければならなかった。我々の会社なら、スマホで簡単に申し込めて、すぐに協力弁護士が元パートナーと相談を始めます。

──現在、協力弁護士は何人くらいですか。

前澤:公表はしていませんが、現状で1万件以上の案件をさばいていますから。相当な人数がいると思っていただいて間違いありません。

<サービスへの申し込みは、受け付けから5日ほどで1万人を超えたと前澤さんは自身のツイッターで発表している。>

──前澤さんの保有資産額は2千億円を超え、2020年の「フォーブス」誌の長者番付では国内23位。利益を追求しない財団などを通じて支援してもよかったのでは。

前澤:母子世帯のひとり親は全国で120万人いるとされています。そのうちの100万人が養育費をもらっていないとして、年30万円なら3千億円。僕のお金なんて1年でなくなります。ビジネス化しない限り、養育費の問題は解決できません。

伊澤:日本には「社会性のあるビジネスでお金を稼いではいけない」という考えがある。しかし持続可能なものにするには、収益を出さないと限界がきます。

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