自分にとって一心同体だったペットを忘れることは絶対できないし、忘れなくてもいいのだと思います。では、どうやって前に進めばいいのか。例えば失恋なんかも同じですが、時間を無理に前に進めることの大変さって、海で流れに逆らって沖に向かって泳いでいく感じ。いきなり進むんじゃなく、浅瀬にいる時間が大事だと思うんです。

 つらいかもしれないけど、SNSの動物の動画とかを見て「あらあらどちたの」というコミュニケーションをやってほしいんです。そのたびに飼っていたペットを思い出してしまうし、悲しくなってしまうし、切なくなってしまう。でも、ちゃんと1週間に1回悲しみの時間に戻る、ということを自分で決めたほうがいい気がするんですよね。最愛のペット以外の人とも知り合っていかなければいけない時に、「あらあらどちたの」というコミュニケーションは、自分の感情を伝えるいい練習になると思います。普段できない感情表現や、心のあり方を外に出してくれるから。

 僕も犬を飼っていたことがありますが、犬のほうがどうしても人間と比べて寿命が短い。でも、自分が死んだらどうせまた会うと思ってるんです。そのときに「あの後はこういう人生だったよ」って報告することを楽しみに生きている部分があったりします。

 あなたとの時間があったからその後の人生でこういう経験ができたとか、こういう人とこんな思い出を共有できたとか、死に別れた相手にとってみたらそういう話は嬉しいんじゃないかな。そう勝手に想像しているんです。

AERA 2020年7月13日号

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しいたけ.

しいたけ.

しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「しいたけ. 公式サイト」では月刊占いやコラムを連載中。 https://shiitakeofficial.com/

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