「三浦友和という俳優は不当に低く見られてきましたが、もっときちんと評価されるべきだと思ってました。今でもベテラン俳優として第一線で活躍しているのは彼だけですよ。俳優としての骨格がしっかりしていたからです」

 本書はもともと三十数年前に企画されたものだった。

「それだけの時代を経たことで、私なりの時代観や世界観が出せたし、平成の30年が間に入ることで昭和という時代をワンクッションおいて見ることができたと思います」

 昭和の青春アイドルを通して日本映画を辿る旅は寺脇さんの自分史を辿る道程でもあった。次なる寺脇映画本は何と50代! から観始めたというアメリカ映画を批判的に論じたものだという。乞うご期待。(ライター・田沢竜次)

■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんオススメの一冊
小説『持続可能な魂の利用』は、30代女子にとって、最強レジスタンス小説とも言える一冊。HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 派遣社員の敬子は、意味不明な接近を繰り返す、正社員の年上男性に恐怖を感じ、人事部に被害を訴えた。しかし結果は、理不尽極まりないものだった。会社を去ったのが敬子なら、彼女が悪かったのだろうと誰もが想像したが、敬子はまったく無実だった。同性のパートナーと暮らす妹を頼ってカナダに滞在し、1カ月後に帰国したらまた、仕事を探して働くつもりだった。だが、どうしても動き出せない。

 日本に戻ってから抱いた違和感の正体に気付くと、今までに傷付いたことや、納得できなかったことを思い出す。日本はあまりにも、「おじさん」社会だった。これでは日本の女の子は負けてしまう──。そんな中、ある女性アイドルグループのメンバーにはまり、敬子がとった力強い行動が、じりじりと削られていた私たちの魂を激しく揺り動かす。

AERA 2020年7月13日号