AERA 2020年7月13日号より
AERA 2020年7月13日号より

 河井前法相夫妻の買収事件が、解散総選挙を引き起こすかもしれない。解散の場合、安倍首相は総理の座を禅譲するか、それとも4選を目指して出馬か。AERA 2020年7月13日号から。

【写真】疑惑に包まれた夫婦はこちら

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 今、「河井事件」が思わぬ方向に永田町の政局を動かす可能性がある。

「安倍首相が9月に始まる臨時国会の冒頭で内閣改造をし、同時に解散総選挙に打って出るのではないか」

 7月に入って、こんな噂が永田町を飛び交っている。

 突然浮上した解散総選挙の噂の震源地は、安倍首相の盟友の麻生太郎・副総理兼財務相だった。この秋解散がまことしやかにささやかれる理由は、やはり、河井事件だという。ある自民党幹部は、解散の判断は首相の専権事項としながらも、その現実味をこう説明する。

「検察が克行容疑者から押収した資料、とくに会計帳簿と使途報告書に何が書かれているのかに注目が集まっています。つまり、この先、何が飛び出すか分からない。検察も黒川問題で失墜した国民の信頼を取り戻そうと本気になっている中、安倍首相の責任問題にまで発展する可能性もある。そうした検察の動きを牽制する狙いがあるのだと思います」

 解散に打って出る場合、もう一つの決断材料となりそうなのが「ポスト安倍」をめぐる思惑だ。安倍首相にとって理想的な展開は、自身の影響力を残しつつ、首相の座を禅譲できることだ。

「来年までに衆院選が行われる。自民党、政治の信頼回復のために努力しないと大変なことになる。しっかり努力したい」

 2日、岸田文雄政調会長は、岸田派の会合でこうあいさつをした。「政治の信頼回復」は言うまでもなく、地元広島で起きた河井夫妻の事件への反省を示す言葉だ。

 岸田氏はポスト安倍候補の一人ではあるが、岸田氏を推す声は世間でも、自民党内でも盛り上がっていない。そもそも岸田氏は政争を仕掛けられても、決して表では派手な喧嘩も立ち回りもしない温厚な人物だと地元の後援会関係者は語る。

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