相次ぐ自身への疑惑追及に河井克行前法相の買収事件が重なり、支持率が下落している安倍晋三首相。解散で延命を狙う手は通じるのか (c)朝日新聞社
相次ぐ自身への疑惑追及に河井克行前法相の買収事件が重なり、支持率が下落している安倍晋三首相。解散で延命を狙う手は通じるのか (c)朝日新聞社

 河井克行前法相夫妻による参院選買収事件。本人の意に反して嵐の中心となっているのが、広島を地盤とする岸田政調会長だ。AERA 2020年7月13日号の記事を紹介。

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 広島を舞台にした河井克行前法相夫妻による巨額の買収事件が、永田町の政局を思わぬ方向に動かそうとしている。

「この事件は検察と河井夫妻の戦いではない。私たちにしてみれば、安倍官邸と広島自民党との“内戦”です」

 そう語るのは、自由民主党広島県支部連合会(広島県連)の幹部。19年の参院選広島選挙区(改選数2)で、この幹部は6選を目指した当時現職の溝手顕正氏(77)を支持し奔走した。溝手氏は国家公安委員長や防災担当相を歴任した地元の重鎮。13年の参院選では2位の民主党候補の倍以上の票を得たほどだ。だが19年の参院選では、広島県連の反発を押し切って出馬した河井案里容疑者に敗北した。

 自民党本部の建前は「2議席独占」だったが、立憲民主、国民民主、社民の各党が推す野党候補の勢いの前に土台無理な話だった。しかし、1議席を譲ったとしても、当初、国政初挑戦の新人の案里氏に、現職の溝手氏が負けるとは思わなかったと前出の幹部は語る。

「案里陣営の布陣を見て驚きました。安倍首相、菅官房長官など案里氏の応援に広島入りした面々を見れば、その力の入れようの差は一目瞭然でした。その上、広島入りをした有力者の中には、こちらの陣営には選対本部への激励はおろか、挨拶にさえ来ない人物もいましたから」

 この時、自民党本部から案里氏に溝手氏の10倍にあたる1億5千万円もの選挙資金が渡っていることを、溝手陣営は誰も知らない。ただ、案里氏の選挙を仕切っていた夫の克行氏の動きは、選挙前から県連では目立っていたと、別の関係者はこう証言する。

「党総裁特別補佐(当時)という立場を印籠代わりに、私は安倍晋三の名代で米国にも行った。私が出てくることの意味が分かりますよね、と言って溝手支持の県議会、市議会の議員を切り崩していたと聞きます。今、考えてみると選挙以前から広島県連の身内という身内が、カネによって買収されていたんです」

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