いつも明るく仕事をしている印象があるが、意外にも真っ先に「私なんて」という言葉が出てしまうタイプだった。なぜできないのだろう、自分はダメだ、と毎日考えていた。

広瀬:悪い癖なのですが、常に減点方式で物事を考えていたんです。100点からスタートし、ダメだったところを減点していき、寝る前に「今日は何点だった」と振り返って、一人落ち込んでいた。でもそれはもうやめよう、と。「100点を目指さなくてもいいんじゃない」と思えるようになりました。

 昨年舞台でご一緒させて頂いた演出家の三谷幸喜さんと接していて感じたことですが、感覚は一人一人違うので、自分が思う「100点」は、周囲から見れば100点でも何でもないのかもしれない。それなら80点くらいでも、自分がリラックスできる状態で仕事に臨むのが一番よいのではないか、と考えるようになりました。

「何かが足りない」と思ったとしても、続けていくことで、力が抜けてどんどんやりやすくなっていくかもしれない。ミスをしたら、それを取り返すことに力を注ぐのではなく、違うところで頑張ればいい。

 失敗することを恐れるよりも、どんな姿勢で臨めば気持ちよく仕事ができるか、というところを大切にしています。こんなふうに思えるようになるまでには時間がかかりましたが、自分をそのまま受け入れてしまえば、必ずしも自分に自信を持たなくてもいいのかもしれない。いまはそう思っています。

 確かに、今年放送された連続ドラマ「トップナイフ−天才脳外科医の条件−」では、成長過程にある女性を、人間味あふれるキャラクターとして魅力的に演じていた。

広瀬:お芝居がすごくすてきだなと感じている俳優の池松壮亮さんがあるインタビューで、「準備は100%の力でするけれど、本番は肩の力を抜いて80%で臨む」とおっしゃっていて、その言葉には影響を受けました。実際は、難しくてなかなかできないことなのですが。

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