「地球はその表面の7割が海に覆われている大きな水球です。そして、人間の体も体重の7割が水分であり、体液と海に含まれるミネラルの成分もよく似ています。体液の塩分濃度は0.9%と今の海よりも低いのですが、実はこれは生物が海から上陸する直前の4億年前の海水の濃度。つまり、私たちは『歩く海』なんです」

 触れる地球では、地球の表面に雲の動きや海流、生き物の移動の様子がわかる映像を表示できる。たとえば、触れる地球で、台風が北上するプロセスと海水温の変化を重ねてみる。近年の日本近海は海水温が高まっている関係で台風は勢力が衰えないまま日本に到達するが、台風通過後は台風の軌跡に沿って海水温が低くなっていく様子がわかる。

「沖縄の人は、多くの災害をもたらすにもかかわらず、台風が来ないと『海がやせる』と心配します。台風が海をかき混ぜて、栄養分豊かな冷たい深層水を、生物が多い海の表面にもたらすので、海が蘇るのです。『災い』も地球環境の面では『恵み』をもたらす部分があるのです」(竹村教授)

 このように海のさまざまな側面を知れば、海に興味がわき、海を訪れる機会にもつながるのではないだろうか。

 ほかにも、プログラミングを通じて子ども自身が海の課題と解決策に気づくことができる「イエロー ピン プロジェクト」の「プログラミングで海のSDGs!」という取り組みもあり、今年は全国9都市で開催予定。

 近年進む海離れだが、ITなどを駆使することで海や地球を身近に感じて、新しい魅力を発見することもできるのだ。(ライター・今井明子)

AERA 2020年7月6日号より抜粋