ホッケー男子日本代表 田中健太(たなか・けんた、32)/88年、滋賀県出身。立命館大学を経て、和歌山県庁に勤務しながらホッケーを続け、2018年アジア大会で日本を初優勝に導いた(写真:gettyimages)
ホッケー男子日本代表 田中健太(たなか・けんた、32)/88年、滋賀県出身。立命館大学を経て、和歌山県庁に勤務しながらホッケーを続け、2018年アジア大会で日本を初優勝に導いた(写真:gettyimages)

 東京五輪までの道のりは決して平坦なものではなかった。男子ホッケー日本代表・田中健太さんは、特別な思いを抱えていた。そんな矢先に起きた1年の延期。視線の先にあるのは、コロナを乗り越えた記憶に残る五輪だ。AERA 2020年6月29日号の掲載記事を紹介する。

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 男子ホッケー日本代表のエース田中健太にとって、東京五輪はようやく巡ってきた大舞台だ。

 北京、ロンドン、リオと3度の五輪予選敗退を経験した田中は18年、公務員という安定した職を捨て単身渡欧。ホッケーの強豪オランダで日本人男子として初めてプロ選手となった。オランダで迎えた2年目のシーズン、リーグは3月8日の試合を最後に新型コロナウイルスの感染拡大のため中断し、その後打ち切りとなった。

「人生は本当に何が起こるかわからない。自分の調子はよかったのに、東京五輪も1年延期になってしまい……。いまは『本当に1年で収まるのか』という不安もありますが、『頼むから開催してほしい』と願うだけです」

 帰国中の現在、コロナ禍で活動は制限されている。だがマイナスばかりではないと言う。

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