「映画の『十戒』に出てくるような真っ二つに割れた滝を作ったり、ガツガツ島の地形を変えたりしてましたね」

■すれ違い生活を埋める

 栃木県在住の夫婦も「あつ森」のおかげで共有する時間が増えた。40代の妻と30代の夫はともにゲーム好き。自粛生活以前は夫の帰宅が遅く、なかなか一緒に同じゲームで遊べなかった。夫はこう語る。

「でも『あつ森』なら、お互いの島を行き来したり、家具や化石を譲り合ったりできます。一緒に時間を過ごせなくても、相手の島に家具を置いたりすることで、お互いの存在を感じ合えるのがいい」

 また二人は新型コロナの影響で社会に余裕のない雰囲気が漂うだけに、夫婦の間で、あるいはSNSで知り合った「あつ森」仲間とたわいもない話で盛り上がったり、笑ったりできるのが楽しかったと口を揃える。

 米国カリフォルニア在住のinuro(イヌロ)さん(46)は、3月後半からリモートワークに入った。ベテランゲーマーのイヌロさんにとって、「あつ森」で遊ぶことは「通常営業の範囲内」だが、それでも外出制限と、寝食を忘れるくらい没頭できる「あつ森」は最適の組み合わせだったそうだ。さらに、家族間のコミュニケーションも活発にしてくれた。その理由を、こう分析する。

「複数人が同時に遊べない仕組みなので、親子一緒にはプレーできません。でもそのおかげで、島で得た情報をゲームの外で教え合うことが増えました。しかも、その情報はゲームの進行を助けるものです。攻略法を現実世界で情報交換することは珍しくありませんが、『あつ森』は時間ではなく、場所(島)を共有するゲームという特徴がある。それがコミュニケーションを活発にしてくれるのは、面白いですよね」

「あつ森」で遊ぶ人たちは、「没頭できる」「会話が増えた」という言葉をよく口にした。また、ネットでは、その癒やし効果から心理療法の「箱庭療法」に近いのではないかという声もある。

 では、精神医学の視点からはどう見えるのだろうか。教えを請うため、飯田橋メンタルクリニック院長の三宅永(みやけひさし)さんをたずねた。

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