スポーツマーケティングが専門の大阪体育大学の藤本淳也教授はこう話す。

「競技スポーツにおいて公平性は極めて重要で、特に4年に1度の大会だけにその担保が大きなポイントになる。これから南半球での感染拡大が懸念されているが、さらに秋以降に北半球でコロナが再び流行し始めると、各国や国際競技団体による予選や選考会の公平性にも影響が出てきてしまう。そうなると開催は厳しいものになる」

 今夏の甲子園やインターハイでも、予選開催や十分な練習が難しいことが中止の理由の一つになった。五輪期間中のことを考えるだけではダメなのだ。

 もちろん公平性は選手選考だけでなく、本番の大会でも選手たちがある程度同じ条件で戦える土俵を整えることが必要だ。前出の金子さんは言う。

「コロナの影響で練習できない選手がいる場合は、五輪前に準備を十分にできるよう、早めに日本に入って調整したり、周辺国などで練習環境を整えたりする配慮も必要でしょう」

(編集部・深澤友紀、川口穣)

AERA 2020年6月29日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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