昨日、完成した作品を見て、いいなと思うところもありましたし、改善すべき点もありました。それ以上に100%以上のことを一生懸命やった自信がある。作品を見ていろいろ気づけるのは、僕自身が成長したということ。「もっとやれ、もっとやれ」と、自分がたき付けられる瞬間でもあります。

 西島(秀俊)さんと綾瀬(はるか)さんの役は、お二人じゃないとできない役だと思いますし、周りにそう思わせる力がすごい。僕も「岡田健史といえば」という作品を増やしていきたい。唯一無二の役者になりたいんです。芸術は、残っていくもの。いつか、僕のことを知らない人が観てくれた作品が、その人の一生に少しでも影響を与えられたらうれしいです。

 高校時代に鮮烈に知った演じる快感が、今も自身を突き動かしている。芝居への情熱が途切れることは? と聞くと即座に「ないですね」と返した。

岡田:どんな仕事もそうだと思いますが、すごく苦しいし、大変。だけど、俳優にはそれを超えるものがある。ある女優さんが「役者の快感を知ったあなたは、もう役者以外の仕事はできません」という言葉を残していて、確かにそうだな、と。役者をやっていなかったら、僕の思考回路や見ている景色は今とまったく違うと思います。もちろん、それはそれで素敵だけど、今の人生を僕は正解にしたいです。

 共演者から「努力の天才」と称されるほど、ストイックに演技に打ち込む。一方、オフの日は、掃除や料理で、生活と心を整えるのが息抜きだ。

岡田:家事は自分をリセットできる。忙しくてすぐ寝ちゃうこともありますが、台本を読んで、ちょっとモヤモヤしたり、違うアイデアないかなって思ったとき、掃除したりご飯作ったり、断捨離したりします。

 最近は全然できてないですが、寸胴鍋でスープを作ったり。この前、鶏のスープを作ろうと思って買い物をしたら、白菜、えのきに加えて、ほうれん草が出てきた。なんで鍋にほうれん草を入れようと思ったんだろう(笑)。「まあいいや」と刻んで入れたんですけど。時々、自分で理解できないことをします。でも、おいしかったですよ!

(ライター・市岡ひかり

AERA 2020年4月27日号