AERA 2020年6月29日号より
AERA 2020年6月29日号より

 政府は感染者と濃厚接触した可能性を通知する「接触確認アプリ」をリリース。政府が目指すインストール率は国民の6割以上でこの数字をクリアしないと、感染を抑える効果は得られないというが、大阪府はQRコードでの追跡システムをすでに導入している。併存しても問題はないのか。AERA 2020年6月29日号は専門家に意見を求めた。

【写真】記者もさっそくインストール!接触履歴はこちら

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 国がアプリ開発に奮闘する間、接触追跡に切り込んだ自治体もある。

 大阪府は5月29日、「大阪コロナ追跡システム」の運用を始めた。施設や店舗にQRコードを発行し、利用者がスマホでコードを読み込む。表示されたWebページでメールアドレスを登録すると、利用施設と日時が記録される仕組みだ。

 約3カ月の自粛を経て6月8日に営業を再開したユニバーサル・スタジオ・ジャパンではパークの入り口やレストランなど21種類のQRコードを設置した。

「パーク内ではマスクの着用が必須です。追跡システムへの登録は個別に案内するのではなく、チラシなどでお知らせしています」(担当者)

 大阪府の吉村洋文知事によると、QRコードを使ったシステムの開発費は80万円。低コストですぐに導入できるため、神奈川県や京都市など自治体にも広がっている。

 高松エクスプレスが運行する高速バス「フットバス」も独自でQRコードを使った追跡システムを導入した。もともと9割弱を占める予約客には、万一感染者が出た場合にすぐ連絡できたが、飛び込みの利用客にも連絡できるようにと仕組みを整えた。12日にシステムを導入したところ、飛び込み客の半分が利用しているという。

 国主導の接触確認アプリと自治体や企業が運用する接触追跡システムが併存する今、どう使い分ければいいのか。利用者の奪い合いが起きれば、「6割普及」は遠のくのではないか──。情報化社会や監視社会を研究する慶應義塾大の大屋雄裕(たけひろ)教授はこの状況を「面白い」と見る。

「人との接触を追いかけるアプリに対して、QRは場所の管理に強いのが特徴です。政府も自治体も予期せぬ結果でしょうが、相互補完する2系統を動かすというのは悪い考えではないでしょう」

 グーグルとアップルが共同開発にあたって重視するのは、プライバシーと透明性、ユーザーの同意の三つ。両社のシステムを利用する接触確認アプリはもちろん、追跡システムも登録に強制力はない。

 ワクチンができても打たなければ疫病が防げないように、アプリも使われなければ無力。カギをにぎるのは、私たちの行動だ。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年6月29日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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