マイナンバーは憲法で保障されたプライバシー権を侵害するとして、男女20人が利用差し止めなどを国に求めた訴訟で、福岡地裁(立川毅裁判長)は15日、請求を棄却した。全国8地裁で提起された裁判は、これで6件連続で原告側の敗訴となった。

「一人の人間としての裁判官の苦悩みたいなものがまるでない、国の言い分をそのまま是認しただけの判決でした。ある意味“美しい”とも言えますが、司法ってそんなものじゃないでしょう。かつての住基ネット訴訟の頃にはまだしもあったメディアの批判が、すっかり影を潜めてしまっているのも大きいですね。ええ、もちろん控訴します」

 原告側弁護団の武藤糾明(ただあき)弁護士(50)が語った。国家と巨大IT企業に支配され、操られるだけの人生を、「ソサエティー5.0」のキャッチフレーズである「人間中心の社会」と呼ばされるのは御免だ。(ジャーナリスト・斎藤貴男)

AERA 2020年6月29日号より抜粋