新型コロナウイルスの影響で一時、店頭からマスクが消えた。買いたいのに買えなかったのはなぜだろうか。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」7月号では、マスク不足現象を経済の基本的なしくみから考えた。

*  *  *

 需要と供給という言葉が経済の世界ではよく使われる。需要とは人々の「買いたいという欲求」のことで、供給とは「商品を市場に出す」ことだ。モノの値段は需要と供給の関係で決まる。人々がすごく買いたい商品なのに少ししか売っていなければ値段は上がり、買いたい人があまりいない商品なのに多く売っていれば値段は下がる。

 通常、モノを売ったり買ったりするとき、売る(供給)側はできるだけ高く売って利益を得たいと考え、買う(需要)側は、できるだけ安く買いたいと思う。需要と供給のバランスが取れたところ(均衡点)で、モノの値段は決まる。しかし均衡点は一定ではなく、需要と供給のどちらかが多くなると移動して、値段が上がったり下がったりもするんだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大は今年になって突然起こり、マスクの需要が一気に高まった。使い捨てマスクは毎日のようにつけ替えるので、たくさん必要になる。でも、生産量は急には増やせない。これは需要が大きいのに供給が小さい状態だ。ふつうの商品なら値段が上がってバランスがとれるのだが、マスクのように健康にかかわる商品は値段をあまり高くするわけにはいかない。だから需要が供給を上回る状態が長く続いて、マスクが店頭から消えたというわけだ。

 マスク不足は、人々の気持ちが拍車をかけた面もある。売り切れて店の棚が空っぽになったことをテレビなどのメディアが伝えると、人々の「手に入れなければ」という気持ちは一段と強くなる。店の前には開店前から行列ができるようになり、その光景を見ると人々はますます焦る。しかも感染はいつおさまるかわからない。すぐに必要はなくても「あればあるだけほしい」という気持ちになる。経済と人間心理はおおいに関係があるのだ。

著者 開く閉じる
一色清
一色清

NEXT日本のマスクの8割は輸入品
1 2