アメリカのかゆみ止めクリームとスプレー。虫さされに特化しているわけではなく、かゆみ全般が対象です(写真/著者提供)
アメリカのかゆみ止めクリームとスプレー。虫さされに特化しているわけではなく、かゆみ全般が対象です(写真/著者提供)

 今年もやってきました──。虫さされの季節が。わたしの住むアメリカ・アラバマ州は、日本のように高温多湿な気候です。気温が上がるにつれ、蚊や蟻や蜂や蠅やムカデ──もう書いているだけで背筋がぞわぞわしてくるくらい大量の虫が発生します。ちょっと自然のなかを歩くだけで虫にさされ、かゆみは数日続きます。

【写真】日本とこんなに違う!アメリカのシンプルなお子さまランチ

 アラバマで過ごす初めての夏。虫よけスプレーを忘れて散歩に出かけた娘とわたしは、案の定蚊の来襲に遭いました。2歳の娘はかゆいかゆいと手足をかきむしります。さされた痕が真っ赤に腫れあがっていくのを見て、わたしはかかりつけの薬局に駆け込みました。息せき切って店員さんに尋ねます。虫さされ用の薬はどこにありますか?

 店員さんの答えはこうでした。「うちには置いていないんです。近所の〇〇にはあるかもしれませんから、そこへ行ってみては?」
 
 む、虫さされ用の薬がないですと? 薬局に? 虫さされのシーズンだから、売り切れちゃったってこと? それともわたしの英語力の問題で、何か特殊な虫にさされたときの特殊な薬品を求めているのだと店員さんに誤解されてしまったのかもしれない。そこでわたしは、アメリカ人歴28年の配偶者に電話してみることにしました。ねえ、蚊にさされたときにぬる薬って英語でなんていうの?

「蚊にさされたときにぬるものね……」
 そうそう、早く教えてよ。かわいい娘の足が腫れあがっているんだから。
「ちょっとググってみるわ」
 ググる!?
「わかった。anti-itch creamっていうらしいよ」

 anti(抗)・itch(かゆみ)・cream(クリーム)って、機能そのまんまのネーミングやないかい!! なんかもうちょっと固有名詞的な言い方はないのか? それに、いま娘に必要なのは蚊にさされたかゆみを止めるもの。「抗・かゆみ・クリーム」って、かゆみ全般に対処する感じでいまひとつ信用できないぞ。

 配偶者は一般常識に多少難ありで、たとえば鍋でお湯をわかす際にフタをすれば早くわくということを27年間知らなかった人物です。きっと、虫さされ用の薬についても知らないのかもしれない。わたしは彼に答えを求めることをあきらめ、義理の母に尋ねることにしました。義母は知識豊富で、子どもを4人育て上げ、おまけに看護師をしている人物です。義母なら固有名詞をバシッと教えてくれるだろうと確信しながら、電話をかけてみました。お義母さん、虫さされの薬ってなんていうの?

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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