「感染した時のシミュレーションはいまも日々二人でしています。感染したら会社に何と伝えよう、正直に話すしかないのか……。結論は、どうしても出ません」

 新型コロナウイルスが感染拡大する中、LGBTなど性的マイノリティーの人たちにも不安や危機感が広がっていることがわかった。

 4月、同性婚の実現を目指して活動する「Marriage For All Japan」(MFAJ)は、コロナ禍がLGBTの人たちにどう影響しているかを探るオンラインアンケートを実施した。LGBTの人たちやその家族などから236件の回答があり、約4割が「パートナーが入院することになった時などに家族と同様に扱われない恐れがある」と回答。また、約14%の当事者が「感染時の家族・友人・病院・会社・学校への報告や公表に関する不安がある」と答えた。

 MFAJ代表理事の寺原真希子弁護士は、LGBTの人たちが抱える日常的に存在していた問題が、コロナ禍で顕在化したと指摘する。

「入院時や死亡時に同性パートナーが配偶者として扱われる保証がないという不安やアウティングへの恐れは、LGBTの人たちが日常的に抱えていたものです。『いつかは直面する』と恐れていた不安が、『明日にでも現実のものとなるかもしれない』という、目の前の不安となっています」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年6月22日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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