発達に特性をもつ子やグレーゾーンと思われる子をもつご家庭で、中学受験を希望する方が増えています。わが子に合った居場所選びはどのように考えたらよいでしょうか。『AERA with Kids夏号』では算数教育家・中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生、元公立小学校の校長先生(田上さん・仮名)、発達障害の専門家(木村さん・仮名)をお招きして鼎談をしました。ここではその一部をご紹介します。

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安浪 近年、「席に座っていられず公立小での勉強にもついていけない。だから公立中学に進ませるよりは面倒見のよい私立中学に入れたい」など、発達の特性からくる相談内容が増えてきています。中学受験の場合は勉強量も多いですし、内容もハイレベルなので、小学校の勉強についていけていない子だと、そもそも中学受験はむずかしいといった現実問題があるんですね。発達特性をもつ子の親御さんに、どのようにアドバイスしていけばよいのかと悩みます。

木村 私の相談室にも、公立で適応できなかったので違う居場所を探して私立へ、という親子がたくさんいます。ただ発達に特性をもつ子の場合、「公立に適応できなかったから」というマイナスから出発して私立を選択すると、入学してもうまくいかないケースが多いのは事実です。私立をやめて地元の公立に戻ったとしても、その後不登校になってしまう子たちも少なくありません。

田上 親御さん方が「公立中学はどうなの?」と思うのは、公立小に嫌な思いをもっているからですよね。学校は集団活動ですから、「みんなで、みんなが、みんなを」になりやすい。僕自身は、これはともすると危ない発想だと思っているのですが、親御さんの中にも「みんなで、みんなが、みんなを」の目線があって、どこかでみんなと同じでなくてはいけないと思っているのかもしれない。この枠組みから抜け出せていない保護者は多いのかもしれませんね。

安浪 一口に発達障害といっても、子どもによってさまざまなケースがありそうですね。

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八木沢由香
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