会見に臨んだ(左から)横田拓也さん、早紀江さん、哲也さん。滋さんのひつぎにはめぐみさんの写真を入れて見送ったという/6月9日、東京都千代田区 (c)朝日新聞社
会見に臨んだ(左から)横田拓也さん、早紀江さん、哲也さん。滋さんのひつぎにはめぐみさんの写真を入れて見送ったという/6月9日、東京都千代田区 (c)朝日新聞社
AERA 2020年6月22日号より
AERA 2020年6月22日号より

 北朝鮮に拉致されためぐみさんの救出に全てを捧げた横田滋さんが亡くなった。遺族が記者会見で、受け継いだ強い思いを語った。もし自分が同じ立場なら。滋さんの遺志を継いで動くのは、私たち全員だ。AERA 2020年6月22日号で掲載された記事を紹介。

【年表を見る】横田めぐみさん拉致事件と滋さん

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 横田滋さんの双子の兄弟・拓也さん(51)、哲也さん(51)は拉致問題解決については安倍晋三首相への絶対的信頼と、政権を批判するマスコミへの不信感を会見の冒頭から再三にわたって表明した。

「2002年の日朝首脳会談の後に父が泣いている姿を見て、そして今回、父が他界したことを受けて、私個人は北朝鮮が憎くて、許すことができません。どうしてこれほどひどい人権侵害を平気で行い続けることができるのか不思議でなりません。国際社会がもっと北朝鮮に強い制裁を科してこの問題解決を図ることを期待したいと思います。そして、私たちのそばに長いこといて支援してくださった安倍総理とともにこの問題解決を図っていきたい」(拓也さん)

「一番悪いのは北朝鮮だと思いますが、拉致問題が解決しないことに対して、安倍総理は何をやっているんだというメディアもあります。北朝鮮問題を1丁目1番地に掲げていたのになにも動いていないじゃないかと。40年以上も何もしてこなかった政治家や、北朝鮮が拉致なんかするわけないと言ってきたメディアがあったから、ここまで安倍政権が苦しんでいるんです。何もやっていない方が政権批判をするのは卑怯だと思います」(哲也さん)

 安倍総理が一貫して拉致問題解決に積極的に動いてきたと評価する姿勢は、頑なにもうつる。一方で2人は、「国内には敵も味方もないはず。日本対北朝鮮、被害者と加害者の構図しかない」としたうえで、日本中が一枚岩になって立ち向かうべきだと訴えた。

「この問題は『横田家の北朝鮮問題だよね』と(受け止められかねない)ところが一番本質的。主権を侵されて工作員が日本国に入ってきて、13歳の無実の少女を拉致して人質外交を43年間続けている。誰もが同じリスクを負っていたかもしれないとわかれば、父の気持ちが独自のものでも頑固なものでもなく、きっと皆さん自分自身も感じるのではないかと思っています。マスコミのみなさまもイデオロギーに関係なく、もっと我がこととして取り上げてほしい。自分の子供ならどうしなければいけないかということを問い続けてほしい」(拓也さん)

「娘を救い出すために全てをなげうって人生の半分以上を活動するというのはたまたま今、こちら側に立っている人間と、皆さん取材される側になってはいますけど、子供のためだったらみんなきっと同じですよね」(哲也さん)

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