その頃、多くのライターや編集者の必読雑誌でもあった月刊「噂の真相」に、小田嶋さんは「無資本主義商品論」を連載。時代の気分をシャープな切り口と変化球で読ませる名物コラムであった。

「雑誌の面白さというのは、編集長がどれだけ不思議な人脈を持っているかで勝負が決まるんですね。それが大メディアと離れたところで傍流のジャーナリズムを形成したものがあったと思う」

「裏を見る眼」の章に収録されたノロウイルス感染について書かれたコラムの末尾に<われわれは、万人が万人にとってウィルスである社会を作ろうとしているのかもしれない>とある。6年前にして現在に通じる洞察が響く。その予見性もコラムニストならではの技。「専門家」言説がメディアを覆う今、在野から投じられる一石。それこそが小田嶋コラムの真骨頂だ。(ライター・田沢竜次)

■ブックファースト新宿店の渋谷孝さんオススメの一冊

『いかゴリラのもっと! 元気が出るマンガ』は、抱腹絶倒でミラクルな日常を描いた一冊。ブックファースト新宿店の渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 自身の周りで起こった出来事を描いたエッセーコミック。前作『オタクだよ! いかゴリラの元気が出るマンガ』に続く、待望の第2弾です。つづ井著の『腐女子のつづ井さん』や、御手洗直子著の『腐女子になると、人生こうなる! ~底~』などと同様、いわゆるオタクな自分と同じ趣味を持った仲間たちを描いています。

 とはいえ、他の作品と比べても破壊力は最大級。まず自身の似顔絵がイカの扮装をしたゴリラです。そんないかゴリラ先生は、やる事なす事すべて大胆。お洒落タウン青山に行っても、街に対して戦いを挑みます。かっこいい傘やお洒落なジーンズはまず破壊。ペディキュアは命懸け。何か行動するのは元ネタありき。そんな抱腹絶倒ないかゴリラ先生のミラクルな日常を是非ご覧ください。こんなご時世だからこそ、読んで頂きたい一冊です。

AERA 2020年6月15日号