第2次大戦期には国威発揚映画が作られ、続く東西冷戦下では反共産主義の機運のなかで一気に左派攻撃が過激化する。先のメイヤー会長、ウォルト・ディズニーらが保守系団体「アメリカの理想を守るための映画同盟」を結成し、共産主義の排除を訴えてハリウッドの悪名高き「赤狩り」を主導したのだ。当局と協力して業界内の左派系映画人を日本語の「非国民」のニュアンスを持つ言葉「非米人(un−American)」として告訴。300人以上の業界人がスタジオから解雇された。

 ハンフリー・ボガートやローレン・バコールら当時の人気俳優たちが「言論の自由を守れ」と抗議活動を行うも、妨害され、黙らされた。チャプリンも事実上、国外に追放。信念を貫いた映画人は投獄か、追放され、残った人々も黙認や仲間を裏切った罪悪感に苦しんだという。ローレン・バコールは当時を次のように振り返っている。

「ハリウッドは威勢がいいようで実は臆病で、簡単に屈してしまうんです」

 赤狩りが題材の映画は「グッドナイト&グッドラック」「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」など少なくない。表現者たち自身が、表現の自由を守りきれなかった苦い教訓として語り継いでいるようだ。(ライター・鈴木あかね)

AERA 2020年6月15日号より抜粋