「こうした症状が表れたらすぐ病院に行ってほしい。治療は、血液をサラサラにする抗凝固療法で血栓を溶かすことが基本になります」

 ただ血栓は自覚症状が少ないため早期診断が難しく、予防に目を向けることが重要だ。榛沢さんは(1)適度な運動(2)十分な水分(3)弾性ストッキングの着用──この3点が有効と話す。

「日本人で血栓ができて亡くなるまでの最短時間は2時間半という報告があります。車を運転していた方です。同じ姿勢で座り続けるのが一番よくない。仕事中でも2、3時間に一度は立ち上がり、数分程度でいいので歩くことが大切です」

 次に水分。こまめにとることが大事で、目安として、食事以外に1日に1.2リットル飲んでほしいという。

 最後の弾性ストッキングは弾力性を持った特殊なストッキングのことだ。足を引き締めることで、下肢の静脈の血流がよくなり血栓ができないようにする。榛沢さんは東日本大震災の避難所で、血栓が見つかった被災者に弾性ストッキングを着用してもらい2回目の検診を実施したところ、弾性ストッキングを着用した被災者の血栓が消失した。自宅にいる時間が長い人は日頃から着用するといいだろう。榛沢さんは言う。

「血栓症は急激に悪化することもあります。水分の摂取や弾性ストッキングの着用など、軽症のうちから備えが必要です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年6月15日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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