6月1日に開かれたデモの中心は若者で、白人が半分以上を占め、中年以上の市民運動家の姿はなかった。公民権運動が黒人中心で進んだのとは異なる/ニューヨークで(撮影/津山恵子)
6月1日に開かれたデモの中心は若者で、白人が半分以上を占め、中年以上の市民運動家の姿はなかった。公民権運動が黒人中心で進んだのとは異なる/ニューヨークで(撮影/津山恵子)
SOHOのPRADAも破壊を逃れられず、ベニヤ板で覆われた。板にも、「黒人の命は大切だ」という抵抗の言葉があった/ニューヨーク(撮影/津山恵子)
SOHOのPRADAも破壊を逃れられず、ベニヤ板で覆われた。板にも、「黒人の命は大切だ」という抵抗の言葉があった/ニューヨーク(撮影/津山恵子)

 黒人のジョージ・フロイド氏(46)が白人警官に殺害された事件を機に、全米でデモが発生。 昼は平和的だが、夜は略奪も。このうねりは大統領選挙にも影響しそうだ。 AERA 2020年6月15日号で、米在住ジャーナリストがリポートする。

【写真】SOHOのPRADAも破壊を逃れられず、ベニヤ板で覆われた

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「それは俺の顔だ」
「お願いです、息ができない!」
「ママ、ママ!」

 フロイド氏は5月25日夜、白人警官デレク・チョーヴィン(当時)容疑者の膝の下で懇願を続け、6分後に動かなくなった。同容疑者はその後3分ほどフロイド氏の首を押さえ続け、蘇生しようともしなかった。

 まさにリンチといえる場面が撮影された動画がSNSであっという間に拡散。直後、事件が起きた中西部ミネソタ州ミネアポリスで人種差別反対のデモが起き、参加者が警察署に放火、建物が全焼した。デモは、大都市ニューヨークやロサンゼルスを含め百数十都市で6月4日時点でも続いている。暴徒を中心とした逮捕者は、9千人超に上る(AP通信による)。

 全米で起きている運動の種類は二つに分かれる。昼の純粋なデモと夜の暴動だ。昼のデモは、「ブラック・ライブス・マター(黒人の命は大切だ)」というグループなどが中心となり、主に10~30代が中心の平和的な集会と行進だ。夜になると、「略奪者」と呼ばれる暴徒が、百貨店やブティック、銀行支店などに押し入ったり、警官を攻撃したりする。

 筆者は6月1日、ニューヨーク・マンハッタンで開かれた千人規模のデモを取材した。参加者は、Z世代(1990年代後半~2010年生まれ)とミレニアル世代(1980~2000年代初頭生まれ)が圧倒的に多く、これまで大規模デモの中心だったベビーブーマーの白髪頭はほぼ皆無だ。無理もない。デモが開かれる場所は、インスタグラムで探さないと見つからない。従来のメールやチラシでデモを通知していたのとは、手法が異なるからだ。さらに、3時間以上にわたる行進でほとんど警官の姿が見当たらなかったほど、平和的なものだった。

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