アラスカで迎えたコロナ禍 穏やかな生活の背景に「分かち合い」の教え

新型コロナウイルス

2020/06/08 09:00

シトカの街並み。奥に見えるのがロシア正教会。人通りはなく、ガランとしている(撮影/あずみ虫)
シトカの街並み。奥に見えるのがロシア正教会。人通りはなく、ガランとしている(撮影/あずみ虫)
ボブ・サムさんが守る森の墓地には、彼の家族も眠る(撮影/あずみ虫)
ボブ・サムさんが守る森の墓地には、彼の家族も眠る(撮影/あずみ虫)
シトカの海にはトドなど多くの海洋生物が暮らしている(撮影/あずみ虫)
シトカの海にはトドなど多くの海洋生物が暮らしている(撮影/あずみ虫)

 新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する直前の2月上旬、アラスカにわたったイラストレーターのあずみ虫さん。街は厳戒態勢だが、森や海の豊かな自然は、変わらぬ営みを続けている。AERA 2020年6月8日号で掲載された記事を紹介。

【あずみ虫さんのイラストをフォトギャラリーでご紹介】

*  *  *
 アラスカの南に位置するバラノフ島のシトカは、鯨やラッコ、アザラシなどの海洋生物を間近に観察できる自然豊かな海辺の街だ。中心部にはロシア正教会があり、海沿いの散策路に立つトーテムポールには、先住民と深い関わりのある動物や人の姿が刻まれている。5月のこの時期には毎年多くの観光客が訪れるが、新型コロナウイルスの影響で街の中心部に人通りはなく、どこかガランとしている。

 初めてこの地を訪れたのが2年前、これが4度目の訪問だ。20年ほど前、写真家の星野道夫さんが写したアラスカの野生動物の写真と文章に魅了されて以来、アラスカに通うのは夢だった。今回は半年間滞在しようと小さな家を借り、2月頭に日本を出国してシトカに到着した。

 その頃、新型コロナは話題には上るものの、街にその影はなかった。しかし3月下旬には厳戒態勢となり、生活必需品以外の店や公共施設は閉鎖され、レストランはテイクアウトのみ、小さな店では入店制限も徹底される。唯一の公共交通機関であるバスは運行停止となり、米・小麦粉・パスタなどの食料品が一時売り切れとなった。

 このような状況下にありながらも、ここシトカの人々の穏やかな雰囲気はまったく変わらない。見知らぬ私にも優しい笑みを向けてくれる。海外で日本人が差別を受けている、というニュースを目にしたが、自分の身には一度も起こっていない。そのヒントは大きな自然にあるように感じている。

 窓の外ではハクトウワシのつがいが巣を作り、目の前の海ではトドが魚を追って泳いでいる。今までと何も変わらない野生動物の営みを目にするたびに心が落ち着き、自然が人を癒やす力を改めて実感する。

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