DIDでは視覚障害者がアテンドをし、見える人・見えない人も対等に暗闇の世界を体験する(写真:ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ提供)
DIDでは視覚障害者がアテンドをし、見える人・見えない人も対等に暗闇の世界を体験する(写真:ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ提供)
AERA 2020年6月8日号より
AERA 2020年6月8日号より

「新しい生活様式」が始まったが、障害者に対する支援は後回しになりがちだ。だがこれまでも多くの困難を乗り越えてきた彼らは、ウィズコロナにたくましく順応している。AERA 2020年6月8日号では、障害を抱える人たちのコロナ禍での生活を取材した。

【障害を抱える人たちはコロナ禍でどんな変化や不安を感じたか?】

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 志村真介さん(57)は、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの理事であり、「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク(DID)」の代表だ。DIDでは光が遮断された真っ暗な世界で視覚以外の感覚を使って、目の前の人間とのコミュニケーションを体験する。照度ゼロの暗闇空間に視覚障害者のアテンドのもと、8人がグループとなって入室。視覚にたよることができない環境下での生活体験を通じ、人間の優しさの本質を再確認するというソーシャル・エンターテインメントだ。1989年にドイツで始まったDIDは、99年に日本に上陸。これまで国内で23万人が体験してきた。

「真っ暗闇の中では、障害の有無は関係ない。目の前にいる人と対等な立場で協力しないと生活そのものができないし、対等だからこそ感じることができる喜びや感動がある。コロナという暗闇も、障害の有無に関係なく、誰にも対等にふりかかる。ソーシャルディスタンスや、フィジカルディスタンスなど、人との距離をとらざるを得ない環境では、自分を守ろうとするがあまり、目の前の人に微笑みかけることすら忘れてしまう。けれども、暗闇での体験がそうだったように、必ず、乗り越えることができると信じています」

 志村さんはコロナ禍の障害者の生活実態をアンケート調査。すると全体の約70%が「生活面の不便を感じた」と回答した。さらに約65%が「現在の仕事・学習環境に不便がある」、約54%が「経済的状況や雇用面、学習状況に不安がある」と回答している。

 当事者らの中には「おいてけぼりにされている」感覚があるという。みんなが大変な時期でもあるので、マイノリティーへの支援まで手が回らないことも分かる。だからこそ、余計に「忘れ去られてゆく」感覚を覚えると訴える。

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