常見陽平(つねみ・ようへい)/1974年生まれ。リクルート、バンダイなどを経て独立。『「就活」と日本社会』など著書多数 (c)朝日新聞社
常見陽平(つねみ・ようへい)/1974年生まれ。リクルート、バンダイなどを経て独立。『「就活」と日本社会』など著書多数 (c)朝日新聞社
AERA 2020年6月8日号より
AERA 2020年6月8日号より

 新型コロナウイルスで苦境に陥るのは就活生ではなく、企業のほうだという見方もある。コロナ禍の就職活動で何が起こっているのか。AERA 2020年6月8日号は、常見陽平・千葉商科大学准教授に聞いた。

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 新型コロナウイルスショックでいかにも学生が就活で苦戦しているかのような報道が散見されるが、私はむしろ企業こそ苦戦すると予想する。

 企業説明会や面接がウェブにシフトしているが、学生に感想を尋ねると、「どの企業も同じにみえる」「社員の本気が伝わってこない」「飽きた」といった声が聞かれる。

 緊急的に始まったウェブでの採用活動に企業も不慣れなのはわかるが、用意された原稿を行儀良く読み上げるだけだったり、当たり障りのない話をしたりする企業説明会では、YouTube(ユーチューブ)で動画配信を見慣れている学生の心をつかむことはできない。その結果、ウェブ企業説明会に学生を集められていない企業も多い。面接だってウェブ上でのコミュニケーションでは一枚も二枚も学生が上手だ。

 オンラインで大切なのは、発信する側の熱量だ。視聴している学生一人ひとりに本気度を伝えるような発信が求められている。

 今後、採用活動が本格化し、特に注意しなければならないのは、内定辞退を恐れる企業の採用担当者が新型コロナを理由に学生の不安を煽り、就職活動を終えろと強要する「就活オワハラ(終われハラスメント)」だ。すでに、学生からオワハラまがいの内定承諾のプッシュを受けたという声もよく聞く。

 現実は、各社の調査などでも新卒採用をやめる企業はわずかで、内定出しのペースが落ちてきたのは選考スケジュールが遅れているため。学生は誤った情報に踊らされず、コロナの影響を必要以上に恐れずに就活に臨んでほしい。

(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2020年6月8日号

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