高校卒業後に北海道から上京して清掃関係の会社に勤めたが、09年に「いろいろあって」(男性)会社を辞め、路上での生活が続く。感染症の流行で売り上げは半分以下に減った。
「この生活から抜け出したいと思うことも少しはあります。でも、保護を受けるには北海道の家族に連絡がいくでしょう。それが嫌なんです」
■家族への連絡避けたい
労働相談に応じるNPO法人「POSSE(ポッセ)」(東京)では3月以降、新型コロナ関連の相談を2千件以上受けた。渡辺寛人事務局長(31)によると、当事者たちが自治体などに置かれている社会保障の窓口を訪れても、支援にたどり着かないケースも多いという。
「二つの次元があって、一つは違法な対応によって制度を使えないケース。もう一つは、運用や仕組みの問題で使えないケースです」(渡辺さん)
例えば生活保護であれば、借金があることを理由に受給を断念させるのが違法な対応で、新宿の男性のように家族や親族への扶養照会がネックになっている場合が運用の問題と言える。
渡辺さんが注目するのも奥田さんと同様に、住宅問題だ。
「住む場所を失った人たちに対して国の責任でしっかり住宅を確保し、生活保護など必要な支援をしていく必要がある。それと、そもそも住む場所を失わないようにする施策が大切。家賃補助の給付金は、この間、かなり要件が緩和されましたが、さらに緩和させるべきです」
コロナ禍で貧困や雇用の形態、教育格差など様々な問題が露呈している。解決に向けて取り組むべきは「コロナ後」ではなく、今だ。(編集部・小田健司)
※AERA 2020年6月8日号より抜粋