県は空港利用者増も見込み、18年から高速船の導入も含めて「海上交通」復活に向けて検討を進めてきた。最終的には費用や導入までの期間を考慮して、23年以降にホーバーの復活を目指すことになった。別府湾の29キロを25分で走る計画だ。

 当時の船体はもう残っていないため、県は3隻を購入し、発着地施設を整備する。民間の新たな運営会社に船舶を貸し付けたうえで運航事業を任せる。鉄道事業などでよく使われる「上下分離方式」だ。県負担は75億~85億円ほど。運航経費の補助は行わず、運営会社にとっては運航収支のバランスが取れるかどうかが参入の課題になってくる。

 大分県交通政策課の佐藤睦浩(よしひろ)さんが話す。

「ホーバーの運航にかかる経費は固定費が大きくて、人件費と燃料費と修繕費が柱です。国内では現在、ホーバーは造られていませんから、海外からの部品の調達といった修繕費も膨らみがちです」

 大分県が計画を進めるうえで「最後のハードル」(佐藤さん)と考えているのが、運営会社がつくかどうかだ。本来なら20年度が始まってすぐにでも公募する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で今のところ見合わせている。

 コロナ禍は予期せぬ事態だったが、全国にいるファンが復活を心待ちにしているはずだ。当時の運営会社員で大分県在住の堺博文さん(44)もその一人だという。「複雑な思いはあるが、ホーバーは必要だったのだと認められたのがうれしい。応援したい」。筆者も、応援する。

(編集部・小田健司)

AERA 2020年6月8日号