水煙を上げて海上を走るホーバークラフト。高速で水中の生態系への影響も少ない半面、燃費や保守費用は高めだ/2009年10月、大分市 (c)朝日新聞社
水煙を上げて海上を走るホーバークラフト。高速で水中の生態系への影響も少ない半面、燃費や保守費用は高めだ/2009年10月、大分市 (c)朝日新聞社
AERA 2020年6月8日号より
AERA 2020年6月8日号より

 空気の力で浮かび、陸も海もお構いなく突き進むホーバークラフト。早ければ3年後、大分の海でかつての雄姿がまた見られる。AERA 2020年6月8日号掲載の記事を紹介する。

【図を見る】ホーバー航路案はこちら

*  *  *

 温泉を楽しんだ後は豊後水道でとれた関サバや関アジ。お供はカボスをぎゅっと搾った麦焼酎──。魅力的な観光地がたくさんある大分県から、新型コロナウイルスの終息がさらに待ち遠しくなるニュースが聞こえてきた。2009年に惜しまれつつ引退した水陸両用の乗り物「ホーバークラフト」(エアクッション艇)が、23年にも復活するというのだ。

“スカート”と呼ばれるゴムでできた機体の下部に空気を送り続け、浮いた状態で進む乗りもの界のスーパースター。子どものころ図鑑などで見て心を躍らせた人も多いはずだ。復活を発表した大分県の広瀬勝貞知事が「日本唯一の速くて楽しい乗り物」(3月4日の定例会見)と自慢したように、国内での運航は今は他にない。世界を見渡しても民間では唯一、英国で使われている程度だという。

 ホーバーのファンで、「ホーバー継承の会」を立ち上げた油布大輔会長(43)はその魅力について「船なんですが、スクリューではなくプロペラがついていて、外観が飛行機とミックスしたような感じなところもいいんですよね。大分でもう一度ホーバーが見られるようになることがとてもうれしい」と話す。

 1971年、大分空港と市内を結ぶ足として運航が始まった。利用者は90年ごろには年間43万人を超えていたが、02~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行もあり03年以降は30万人台と低迷。08年にはリーマン・ショックもあった。運賃がバスの倍ほどということもあって客足は戻らず、09年に運営会社が破綻した。

 その後、大分空港へのアクセスは自家用車かバスが中心となった。例えば大分市内の中心部からだと約1時間かかる。これがホーバーを知っている世代の空港利用者にとっては不評だったようだ。大分県では天候次第で別府や湯布院の辺りで濃霧が立ちこめることも多く、高速道路の規制がかかってしまうとさらに時間はかかった。

次のページ