6月1日からは通勤でも混んだ電車に乗ることになる。ウイルスを恐れながらストッキングにヒールという通勤スタイルで満員電車に乗ることを考えると、暗い気持ちになるという。

 より切実な声もある。フリーのデザイナーの男性(54)は、糖尿病歴5年。「糖尿病患者は新型コロナに感染すると重症化しやすい」という報道を目にする度に、不安になる。複数の人がいる電車に乗ったり喫茶店に入ったりすることが恐ろしく、極力外出しないよう生活してきた。緊急事態宣言の発出中はクライアントから呼び出されることもなく、仕事はすべてオンライン。しかし、緊急事態宣言が解除されたことで呼び出しが増えそうだ。「社に来てほしい」と言われると、それが電話やオンラインで済ませられる内容であっても断りにくい。

 さらに理不尽に感じることもあった。先日の仕事では、男性に仕事を発注する立場のクライアントは「在宅勤務を命じられている」と同行せず、男性だけが電車に乗って依頼先に行かされたのだ。クライアントはオンラインで打ち合わせに参加した。

「自分の身は自分で守るしかないけれど、クライアントに“配慮して”とは言い出せません。怖いです」(男性)

(編集部・川口穣、ライター・羽根田真智)

AERA 2020年6月8日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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