過去を客観的に見直そうとnoteに文章を書き始めた。その中で、夢を持てる人と、誰かの夢をサポートして叶える人の話が多くの人の共感を集め、テレビ番組「セブンルール」への出演、本書の出版につながった。

 今年初めにはnoteの読者60人と、それぞれ90分ずつ雑談する企画を実行した。

「それってどういうこと? もっと聞かせてと質問しながら対話すると、なぜかみんなスッキリして帰っていく。私にできるのはお手伝い。自分が主体で何かするより、引き出したりサポートするのが得意みたい」

 雑談でも本でも、人の背中を押すところは変わらない。借りてきた言葉ではなく、自分で考え、納得したことを伝えている。

「こうじゃないか、ああじゃないかと、しつこく考えている過程が好きなんです。自分で答えを見つけたい。考えるテーマを持っていると、見たもの、読んだものが紐づいてくる。それが面白いんです」

(ライター・仲宇佐ゆり)

■HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんオススメの一冊
 乱歩賞作家・薬丸岳による小説『告解』は、“贖罪の在り方とは?”というシリアスなテーマについて、小説家が本気で問うた一冊だ。HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 雨の夜、酒に酔って車を運転し、ひき逃げ事件を起こした籬(まがき)翔太は、20歳の大学生だ。撥ねられた81歳の被害者は、高熱を出した夫のためにコンビニへ氷を買いに行った帰りだった。自分が戦争を経験していた年頃の若者に、長く連れ添った妻を轢き殺された法輪二三久(のりわふみひさ)は、5年の刑期を終えて出所した籬に、何とか接近しようとする。まるで、償いはまだ終わっていない、とでも言うように。

 執拗に追われる籬と、命を削るようにして追う法輪。彼は高齢のため、失われていく記憶とも闘っていた。取り返しのつかない事件において、加害者は被害者遺族に対して何を思い、何をすれば赦されるのか。私は絶対に間違えないし、後悔したこともないし、身勝手になったこともない。そう言い切れる人間以外は、この物語の結末から目が離せないだろう。

AERA 2020年6月1日号