現場に求めたハードルは高い。どうやってその構想を実現していったのだろうか。

 実際に現場で若手のリーダーとして動いた、花まる学習会の竹谷和さん、梅崎隆義さん、中山千明さんの3人の先生に話を聞いた。

―― 最初に「オンライン化」の話を聞いたときは?

竹谷 高濱さんから「必ずオンラインでしかやれなくなる時が来る」、という強いメッセージがあったので、私たちも「よし、一気にやろう」という感じでした。もともと花まるには「柔軟さ」があるんです。マニュアルがあろうが、目の前の子供の反応を見てそれに適応する、というのが現場では当たり前ですから、あまりびっくりはしませんでした。

梅崎 むしろ、いちばん最初にやるのはうちだろうな、と(笑)。学びの機会を届けることは、環境さえ整えればなんとかできるだろう、というのがありました。

中山 高濱さんはいつも細かく指示を出すというより、今ブレてはいけない本質はここ、と言うタイプ。今回は「何があっても学びを止めない」ということ。だったらあとは現場で考えないと、と思いました。

―― コンセプトはどうやって決まったのですか?

竹谷 具体的な案は10通り以上作ったと思います。それぞれメリット、デメリット、現実性などを考えて。指針となっていたのはやはりふだんの現場での子どもや保護者とのやりとりですね。「これをやったら子どもは喜びそうだね」とか「これだとお母さんたちはたいへんだよね」とか。

中山 アイデアは全員が出していきました。話し合うたびにどんどんブラッシュアップされていく感じでしたね。お互いの意見を否定するのではなく、それいいね、それいいね、と認め合うことで、「こんな考えもあるんだ」と刺激にもなりました。

竹谷 いろいろあった中で、最後まで残ったのが全てライブ授業でやる、という案でした。でも、幼児や低学年の場合、リアル授業だからこそ60分ないし90分集中できるけれど画面の前ではその集中力、意欲が持続できるか、という課題がありました。また現実的に音声のずれなどのデメリットも考えられたので、ふだんの授業は毎日配信する「まいにち花まる」の授業動画にし、コミュニケーションに特化した内容は週1回の「花まるスタディルーム」というライブ授業の2本立てでやることに落ち着きました。

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